4章 人間が存在する意味

人間は他の動物や植物、それ以外の無機質なものとどのように違うのかと考えることがあります。

人間から見て無機質なものは完全に物と決めつけてしまっている。しかし人間の体内にも無機質なものは存在し、それらがあることで我々は人間として生きていけるのです。

そう考えると、我々が見ている無機質な物も実はもっと大きな枠でとらえると大きな生命のようなものがあり、その中で循環しているのではないかとも思えてきます。

 

植物はどうか?

植物には脳が無いので、直接的な意を感じることはできません。そもそも動きも成長以外ではありません。

しかし、全くもって意思が無い(目的が無い)とは考えられません。

植物は植物で個々の種の繁栄を求めて競争して生きています。これらが意思(目的)でないとするなら何なのか、私にはわかりません。

 

ではほかの動物、特に哺乳類、霊長類ではどうなのかと考えていくと、意識を直接感じ取ることができる場面が多々あります。そして、彼らが生きていくためにとっている本能的行動の数々は、人間においても共通なことばかりです。

呼吸をする 食物摂取をする 排泄をする 恒常性 睡眠 まばたき 母性 父性 怒り 不安 痛み かゆみ 喜び 悲しみ ・・・・

共通点を探し出したらきりが無いくらいです。

しかし、人間は他の動物とは違うといわれる最も大きな理由は言語だといわれています。

確かに言語があることで効率の良いコミュニケーションができ、数字があることで数量などを具体的に把握することができる世になりました。また文字ができることで、記録をすることができ、情報を共有しやすくもなりました。それと同時に空想世界が飛躍的に広がりました。

人間にしかできないことはいくつかあります。そしてそれらはとんでもなく大きなことを成し得ています。

では、それをもって人間が他の動物よりもはるかに優れているかというと、そこは疑問に思います。

確かに人間は他の動物と比べると優れています。しかし、それはごく一部の人間であることも事実です。

大半の人間は、何のために生きるのかとか人間の役割は何なのかとか宇宙(あるいは地球)が存在する意味などを深く考えることは無いと思います。

ということは、ほとんどの人間は惰性で生きていて、主体性が無いのです。

そんな人間が、偉そうに他の生き物よりもはるかに優れていると言っているのは、あまりにも無知な発想だと思います。

自分自身の行動は何によって制限されているのか、どうして生きているうえでそこそこの充実を味わうことができているのかなど考えたこともないと思います。

人間の生き物としての限界や、新たな可能性を模索できて初めて優れた生き物だと私は思います。

なんとなく会社勤めをしてなんとなく生きている人間が、尊い存在かと言われれば、自信をもって尊いとは言えません。そんな惰性な生き方をしているのであれば、他の動物たちと区別できるほどの優れた生き物だとは思いません。

動物愛護家の方はある意味で素晴らしいと思います。動物に敬意を抱くということは、自分自身の限界に気付いているということでもあると思います。そして、他の生き物に敬意を抱くことができるということが、これからの人間の役割なのではないかとも感じます。

人間は他の生物に比べ、はるかに安全に生きていくことができるようになりました。

そういった環境を自分たちで作り上げることで、他者(他の生き物)へも配慮するこができる存在へと変化することができたのです。他の生き物たちでも、他種を助けることはまれにあります。なので、このこと自体が特別な行動だとは思いませんが、人間という種全体で他種を助けるということができるのは、やはり人間だけだと思います。

そう考えると、人間の役割の一つは、生態系の維持にあると言えます。

当然現在の環境が人間にとっても適しているだろうと考えるからの行動ではありますが、それでも他の種を含めて生き残っていこうという大いなる意思に変わりはありません。

もう一つ、人間に役割があるとすれば、これはこれから何百年、何千年と先の話になっていくのでしょうが、生態系の拡大(繁栄)だと思います。

人間は、大航海時代のように、フロンティア精神にあふれており、積極的に自分たちが繁栄できる領域を広げてきました。

今後は、宇宙にその行動が広がっていくことは間違いありません。

そこに、前記の生態系の維持もかかわってくると、旧約聖書にあるようなノアの箱舟の実現となってしまいそうですね。

こういった人間の可能性を考えると、確かに人間は他の動物とは違い、とんでもない可能性を秘めているということは感じます。

その一方で、あまり物事を考えない人たちの発言を聞くと、それほど変わりはないという事実も感じます。

人間の脳のすごいところは、他の動物と違って、強く望むことは、他の人間を巻き込んで実現するということです。

だからこそ空想が現実に近づいていくのです。

この章では矛盾する人間について語りましたが、一番皆さんに考えていただきたいことは、ただ単に生きているだけであれば、たとえそれが人間だとしても、他の動物とさほど変わらないということです。人間は、使命感を感じることができます。だからこそ、人間は他の動物とは違って特別だと考えるのであれば、その特別な生き物である人間に生まれた自分は、この人生においてなにを成し遂げるべきなのかを問いていただきたい。これが人間が人間である最大の意味だと私は思います。